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8月1日、東京国立博物館(以下東博)でやっている特別展「対決−巨匠たちの日本美術」を見てきた。
なぜ金曜日を選んだか? それは金曜は夜8時までの夜間開館日。そしてその選択は正しかった。
あれだけ昼は多くいる観客が6時以降なるとぐっと少なくなり、7時以降はほとんど人がいなくなる。これは見やすかった。
午後3時ごろ東博に着くようにした。
チャリンコを入り口左に置いて、ツッカケでパスポートを提示して堂々と入館。まるで銭湯にいくみたい。ま、美術の洪水につかるから同じようなものか。
じつはこの時間に行こうとしたのにはわけがある。
東博は今年から資料館でミュージアムシアターという超高画質の拡大映像が楽しめる。これはすごくいい。もう何回見ても感動する。
金土日限定の午前10時から午後4時まで(1時はなし)各20分間、一日6回上映する。この日からプログラムが変わって篤姫と徳川宝物らしい。ホームページに案内が載っていないから、さては有料にするためにいったん打ち切ったかと心配したが、電話で問い合わせたらやっているとのこと。
「3時に行けば4時の回は楽勝だろう」作戦。
作戦は失敗した。
楽勝ではなかった。
予約受付に行ったら、「予約終了・満席」の札が貼られている。思わず係りの中田有紀似の姉ちゃんにぼやいた。
「えっ、終了ですか? そんなに人気あるんですか?」
「きょうはもう2時の時点で4時の回は予約で埋まったんです。最近急に人気が出ましてね。午前中に来られたらどうですか?」
なんでやねん。ゆっくりみるために夜間開館狙って3時ごろに来たのに、朝から来いなんて一日中東博におれってか?
気落ちして、軽く常設展見てから特別展に行くことにした。
仏像コーナーでは特集陳列「六波羅蜜寺の仏像」をやっていた。
念仏を唱える口から六体の阿弥陀が現れたところを写実彫刻したあの有名な空也上人立像(重要文化財)はさすがになかったが、あるわあるわ、いい仏像がわんさか。
目が怖い平清盛坐像、落語家みたいな運慶坐像、空也が造営した四天王像のうちの持国天立像など重文だらけ。こんないっぱい六波羅蜜寺の宝物館に陳列されている作品を持ってきたら、むこうの宝物館はどうなっているんやろ。そんなに彫刻多く所蔵していなかったと思うし。
気になったのは地蔵菩薩立像が巨匠定朝の作ってなっている。
えっ? 定朝って現存する確実な遺作は平等院本尊の木造阿弥陀如来坐像(国宝)だけなんちゃうん?
9月21日までこの「六波羅蜜寺の仏像」は展示するって、贅沢なこっちゃ。
次の部屋は特集陳列「二体の大日如来像と運慶様の彫刻」となっていて、「運慶様」の彫刻群。
先日話題となってぼくもそのことについて書き込んだ、真如苑が買い取った運慶作品と考えられるものと、光得寺のと二体の大日如来像大日如来坐像があった。さすがにニュースとなった仏像なので、真如苑蔵のほうは何人かの人が熱心に見ていた。
空海直筆の国宝「風信帖」や、野々村仁清の色絵月梅図茶壺(いろえげつばいずちゃつぼ)、国宝「海賦蒔絵袈裟箱」などいいものが出ていたが、非常に気になったのが、今回初出品もの。
本館2階の「禅と水墨画 ―鎌倉〜室町」の部屋に「中国真景図巻」雪舟等楊筆というのがサラリとあった。
何? 雪舟? すごい絵じゃない。
これは常設に限らず特別展「対決−巨匠たちの日本美術」でも多く見受けられたが、なんで新しい発見が急に多く出てきたのだろう。
エレベーターで気になることを耳にした。
「また何億とかついたら、売ろうとして…」
と苦笑いしながら男と女の人が話ししていた。東博の人かしら。
そうか、近年、お宝ブームも手伝って、先日の運慶作品じゃないけど東博に真贋を依頼している人が多いのかも。
そういえば先月も『源氏物語』の写本完全版が、東京や京都などで相次いで発見され、美術界ではビッグニュースとなっている。
なんか驚くことがまだまだ起きそうな。
こりゃ小説書けそうだな。
平成館に入って創刊記念『國華』120周年・朝日新聞130周年・特別展「対決−巨匠たちの日本美術」を見た。
『國華』って朝日新聞が出し続けてきた、月刊の美術研究誌らしい。そりゃ力が入るわな。
きっと朝日新聞の拡張員もこの券を拡剤としておおいに使っていることだろう。
ちなみになぜ拡剤って言うのか。それは新しく新聞を取ってもらうために洗剤をサービスでつけていたから、拡張するための洗剤で「拡剤」。
まあ、どれも見ごたえじゅうぶん。
■ 運慶 vs 快慶 —人に象る仏の性—
両巨匠の地蔵菩薩坐像がライバルのように対峙している。兄弟弟子でありながら持ち味の違う両仏師。リアリズムの厳しさを持つ運慶と、達観した境地のようなおだやかさが特徴の快慶。しかし今回の運慶作品は本来の迫力は陰を潜め、なんか両作品がかなり似通っている。
■ 雪舟 vs 雪村 —画趣に秘める禅境—
雪舟の国宝「慧可断臂図」や「秋冬山水図」はいうまでもなし、横綱級の画。
かくがくとした直線的な雪舟に対し、優しさを感じる雪村(せっそんと読む)。中国に行ったことのない雪村が私淑している雪舟を真似て創造で描いた「風涛図」「金山寺図屏風」が、なんかすばらしかった。中国以上に中国的、いや桃源郷かな。
シャングリアもしくは鍾乳洞を抜けると理想の山里雲南省バーメイ村かな。
南国に行ったことのないルソーが、現実より迫力あるすばらしい南国調の絵を描いたのとイメージがだぶった。
■ 永徳 vs 等伯 —墨と彩の気韻生動—
ぼくが行った時、ちょうど「松林図屏風」が入れ替わっていて展示されていなかった。ま、よく見てきたからいいけど。代わりに展示していた初出品もの「四季柳図屏風」がすごくよかった。個人蔵だって。
江戸琳派の鈴木其一の「朝顔」や光琳の「燕子花図」なんかより先に、同じ種類の草花をデザインのようにかく発想が桃山時代からあったのかと思った。
永徳は武骨だなと思っていたが、「松に叭叭鳥・柳に白鷺図屏風」を見て見方が変わった。もっといっぱい永徳の作品が残っていたらよかったのに、時代ってむごいな。
■ 長次郎 vs 光悦 —楽碗に競う わび数寄の美—
本阿弥光悦はやはり不出世の天才だ。国宝のなかの国宝「舟橋蒔絵硯箱」が出ていた。本阿弥光悦が文を書いて、後ろの鶴の絵を俵屋宗達が担当した「鶴下絵三十六歌仙和歌巻」を久しぶりに見た。震えた。展示作品数も多く、両者の比較がかなり見てとれる。巨匠光悦に対峙することで長次郎へのスポットもおおいにあてられている。
■ 宗達 vs 光琳 —画想無碍・画才無尽—
2つの「風神雷神図屏風」、俵屋宗達筆の国宝「風神雷神図屏風」と尾形光琳の重文「風神雷神図屏風」はラスト一週間だけ展示するんだって。さてはその次の「大琳派展」のために出し惜しみしてるのかな。
京都の養源院に日頃ある「松図襖」なんて誰も見向きもしないのに、こんなときだけ一生懸命見られるなんて、宗達先生も複雑な気持ち?
宗達の「秋草図屏風」は絶品。
この2人はじつはだいぶ気質は違うだろうなあ。
■ 仁清 vs 乾山 —彩雅陶から書画陶へ—
仁清の「色絵吉野山図茶壺」はほんと鮮やか。「色絵月梅図茶壺」を常設展に置いたのは東博の英断。拍手。他の作品もおおいに見ごたえあり。ぼくは仁清ファンかな。
■ 円空 vs 木喰 —仏縁世に満ちみつ—
かわいかった。ほっとした。
■ 大雅 vs 蕪村 —詩は画の心・画は句の姿—
2つの国宝「十便帖」と「十宜帖」をよく貸し出してくれたなあ。国宝「楼閣山水図屏風」を今回ここで展示作品として選んだ力眼に拍手。ほんとすばらしい。
■ 若冲 vs 蕭白 —画人・画狂・画仙・画魔—
奇才で破天荒さでは最大級の若冲と蕭白。
「群仙図屏風」はこの前重文になったばかりだけど、すぐ国宝に指定されるんちゃう。みんなこの絵をみて「気色悪い」って言っていたけど、ぼくは非常にここちいい。この2人の天才に関しては、これだけでじゅうぶん観客を動員できる対決。いい絵がたくさん出ていたが、若冲の点描技法はのちのヨーロッパで大ブームになる、スーラに代表される点描の先人をなす。
■ 応挙 vs 芦雪 —写生の静・奇想の動—
芦雪の「虎図襖」はとにかくでかい虎だけど、なんかみーこに似てる。まるで猫。かわいい。応挙のもっといい絵あっただろうに。「海浜奇勝図屏風」はわざわざアメリカのメトロポリタン美術館から借りたんだ。迫力あるね。「保津川図屏風」もいい。
■ 歌麿 vs 写楽 —憂き世を浮き世に化粧して—
この2人、ほんとうは同一人物じゃないのかなあ。
■ 鉄斎 vs 大観 —温故創新の双巨峰—
どうなんだろう。なんかおまけみたいな展示になっていない?
鉄斎の「富士山図屏風」は締めにふさわしい迫力。
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