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標準的な単一のブリッジ電源のアンプであれば、第二世代化の部品代だけならフル実装しても10万円程度までの予算。GoldMundの巨大なモノラルパワーアンプをやらせていただいた時は物量が凄いんでステレオ分で90万円近く掛かった。万が一作業に失敗したときのリスクを考えれば本来GoldMundのような高価な製品は当店の規模でやれる仕事ではなかった。でも電源の理屈を理解してくれた素晴らしいオーナーさんが「全ての責任は俺にある。失敗しても全く構わないから」と私を説得してくれて実現に至ったもの。クレーマーのこの多い世の中で、全てを任せてやらせてくれた。本当に素晴らしい方です。
あの方の装置群をチューニングさせて頂いて分かったこと、というか確信したことがある。それは、どんなに高価なアンプでも、基本的な構成はその辺の家庭用アンプと変わらない、という事。トランスが巨大で、整流回路が大容量で、出力素子がたくさんパラドライブされている、という規模の差はあるけれど、ものの構成は変わらない。それはつまり、高いアンプは音が良いというのは、メーカーと評論家が「物量」を売り物にして長年築いて来た幻想でしかないという事。
ブリッジ整流回路には100年以上の歴史がある。交流を直流にするのに、とりあえずコンデンサーさえ入れてやればリップルが取れるのでオーディオ用電源にも使われている。しかし、そこで見えているのは電圧波形だけ。整流されて確かに直流にはなっている、しかし、負荷を駆動するのは電圧ではなく電流だ。ここが大事なところ。
ブリッジ整流回路の電流供給能力はどうかという視点でみると、コンデンサは充電か放電の一方向の動作しかしない。それは整流後の波高直がコンデンサ電圧に近いところでは緩やかな切り替え時間となりその下流には「電流を流さない時間帯」が生じているということ。そしてまた、整流用のダイオードにはターンオン時間という、順方向に電圧がかかってから電流を流し始めるまでの時間遅れがある。ここに電圧をかけると、そう、負荷側の回路ではコンデンサの電圧が立っていても「電流を流せていない時間帯」が生じている。これらが音の余韻をなくしている原因。これらがブリッジ整流回路の大きな欠点。この欠点は一般のシンクロでは観測できず見過ごされて来た。シンクロスコープは電圧しか見てないので観測そのものが、そのままではできない。
ダイオードのターンオン時間をより短くしたショットキーバリヤダイオードというのがあり、それで整流回路を構成するとある程度音が良くなるのでオーディオアンプではよくやられている。しかしそれでもコンデンサ切り替え時間やターンオン時間のそのものが無くなる訳ではないので抜本的ではなく、所詮「聞こえなかった余韻が少しきこえる」程度の改善にしかならない。
これを、整流回路の交換でコンデンサを含めて抜本的に改善するのが、第二世代電源化というチューニング。かつて半導体メーカーで働いていた出川先生という方の特許。これをやると電流の流れない時間帯が無くなるので音が滑らかになり、余韻に包まれる。リアルが極限まで再現される。
先のGoldmundをやらせてくれたご家庭では、私のチューニングの直後にその音を聴かれたご家族が、皆さん涙を流された。機材にいくら投資してもさっぱり音が良くならないので心底悩んでおられた、それが一気に解消されたとおっしゃって下さった。この方のご家族とは、心からのお友達になっている。
なかなか自分でこういうチューニングをやろうという人は今はホントに減っている。どうしてもリスクを伴うし、半田ごて初めての人では到底無理です。そういう意味ではなかなかわかってもらいにくい技術ではあります。悩ましいところです。
https://www.ne.jp/asahi/sound.system/pract/TechKnow/capacitorinput02.gif
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